「あの見積、いくらで出したんだっけ」。請求書を作る段になって、デスクトップのフォルダを開き、見積書のエクセルを探す。見つけた金額を請求書のテンプレートに打ち直す。月末になると今度は通帳を見ながら、入金管理用の別のシートに日付を入れていく。このとき、見積書・請求書・入金表は、それぞれ別の場所にある別のファイルです。
件数が月に数件のうちは、これでも回ります。問題が出るのは、案件が20件、30件と増えたときと、途中で金額が変わったときです。ここでは、バラバラの状態で何が起きるのかを具体的に見たうえで、「案件を軸にひとつながりにする」とはどういうことか、そしてツールを導入する前でもできる整理から順に書いていきます。
バラバラだと、具体的に何が起きるか
「非効率だ」という感覚的な話ではなく、実際に起きるトラブルは大きく3つに分かれます。
1. 同じ内容を3回打ち込んでいる
顧客名、住所、案件の名前、明細、単価、数量。見積書に打ち、請求書に打ち直し、入金管理表にもう一度打つ。1件あたり3分で済んだとしても、月30件なら90分です。しかも打ち込みそのものより、「前のファイルを探す時間」のほうが長いことが珍しくありません。
2. 金額が食い違う
これが一番やっかいです。よくあるのは次のような流れです。
- 最初の見積は30万円で出した
- 打ち合わせで作業を1つ減らすことになり、口頭で「27万円で」と合意した
- 見積書のファイルは直していない(メールで伝えただけ)
- 請求のとき、フォルダにある見積書を見て30万円で請求してしまう
先方が気づけば訂正すれば済みますが、信用の面では小さくない傷になります。逆に、値引き後の金額を覚えていて27万円で請求したものの、社内の売上見込みシートは30万円のまま、ということも起こります。どちらの数字が正しいのか、ファイルを見ても判断できない状態です。
3. 請求漏れと、入金の確認漏れ
納品は終わったのに請求書を出し忘れる。あるいは、請求書は出したのに入金があったかどうかを追えていない。どちらも「一覧で見る場所がない」ことから来ます。請求書がフォルダの中のPDFとして存在しているだけだと、「出したかどうか」は自分の記憶に頼るしかありません。
入金の確認漏れは、気づくのが数か月後になりがちです。売掛が残ったまま決算を迎えると、処理が面倒になります。このあたりの扱いは、国税庁の資料または顧問税理士にご確認ください。
案件を軸にひとつながりにする、とはどういうことか
一元管理というと「全部を1つのファイルに入れる」と思われがちですが、そうではありません。見積・請求・入金はそれぞれ別の情報のままでよく、変えるのは「何にぶら下げるか」です。
バラバラの状態は、書類の種類ごとに分かれています。
| 置き方 | まとまりの単位 | 「この案件どうなってる?」と聞かれたとき |
|---|---|---|
| 書類の種類ごと | 見積フォルダ/請求フォルダ/入金シート | 3か所を開いて突き合わせる |
| 案件ごと | 案件1件に、見積・請求・入金がぶら下がる | その案件を開けば全部見える |
案件を軸にすると、たとえば「A社の店舗改装、2026年3月」という1つの案件の中に、見積(27万円・4月10日提出)、請求(27万円・5月1日発行)、入金(27万円・5月31日着金)が並びます。金額が3つとも一致していれば正常、どこかが空欄なら、そこが次にやるべきことです。
この形にすると、月末にやることが「思い出す作業」から「空欄を探す作業」に変わります。請求の列が空のまま納品日を過ぎている案件が請求漏れ、入金の列が空のまま支払期日を過ぎている案件が未入金です。記憶に頼らず、目で見つけられます。
エクセルでこの形を作ることもできます。1行1案件にして、右に向かって見積金額・請求日・入金日の列を足していく形です。具体的な作り方は受注管理表をエクセルで作る|テンプレートと、入金までを追う運用で書いているので、まずは手元のファイルを整理したい方はそちらを参考にしてください。
一元化するとき、最初に決める2つのこと
ツールを入れるにせよエクセルで作るにせよ、先に決めておかないと後から作り直しになる項目が2つあります。
案件番号の付け方
見積・請求・入金をつなぐ糸が案件番号です。これがないと、同じ顧客から似た案件を2件受けたときに区別できません。
実務で扱いやすいのは、年月+連番のような形です。たとえば2026年9月の3件目なら「202609-003」。この付け方には次の利点があります。
- 番号を見ればいつの案件か分かる
- 毎月連番がリセットされるので、桁が増えすぎない
- 並び替えたときに時系列に並ぶ
逆に避けたほうがよいのは、顧客名や案件名を番号に含める付け方です。「Aシャ-カイソウ-2」のような形は、最初は分かりやすいのですが、社名が変わったり案件名が途中で変わったりすると破綻します。番号には意味を持たせすぎないほうが長持ちします。
なお、案件番号と請求書番号は別のものです。案件番号は社内で案件を識別するためのもの、請求書番号は発行した請求書を識別するためのもので、1つの案件から分割請求で2枚の請求書が出ることもあります。請求書番号のルールについては請求書番号の付け方|連番のルールと、やりがちな失敗に詳しく書いています。
どこを「正」とするか
先ほどの30万円か27万円かという食い違いは、突き詰めると「どこに書いてある数字を信じるか」が決まっていないことが原因です。
決めるべきは、金額が変わったときどこを直せば全部直ったことになるのかという1点です。案件を軸にした形なら、案件の金額欄を正とし、そこから見積書も請求書も作る、と決めます。メールで値引きに合意したら、その場で案件の金額を27万円に書き換える。書き換えた時点で、次に作る請求書は自動的に27万円になります。
ここで重要なのは、すでに先方に出してしまった見積書PDFは直さない、ということです。出した書類は履歴として残し、変更は新しい版として扱う。「正はどこか」と「過去に出したものは何か」を分けて考えると、混乱が減ります。
ツールを入れる前に、今日からできる整理
いきなりシステムを入れなくても、順番としては次の3ステップで進められます。
- ステップ1:案件番号を振る。今動いている案件に、上のルールで番号を付ける。過去の分までさかのぼる必要はありません。今月受けたものからで十分です。
- ステップ2:ファイル名を番号で始める。「202609-003_A社_見積.pdf」「202609-003_A社_請求.pdf」のようにすると、フォルダが分かれていても番号で検索すれば1件分がまとまって出てきます。
- ステップ3:案件一覧を1枚作る。列は、案件番号/顧客名/案件名/見積金額/見積提出日/請求金額/請求日/入金日/備考。これだけです。書類そのものは今までどおりPDFで置いておき、この1枚は「状況を見る場所」に徹します。
ステップ3の一覧ができると、週に1回開いて空欄を眺めるだけで、請求漏れと未入金が見えるようになります。ここまでは費用がかからないので、ツールを比較検討している段階でも先に始められます。
ただし、この方法には限界もあります。一覧への転記は手作業なので、書類を作ったのに一覧を更新し忘れると、結局ずれます。担当が2人以上になると、同じファイルを同時に触れない問題も出てきます。転記をやめたいと思ったときが、ツールを検討するタイミングです。
KantanBiz は、この「案件を軸にひとつながりにする」形をそのまま扱えるように作られています。案件を1件登録すれば、その中で見積を作り、内容を引き継いだまま請求へ進み、入金したかどうかまで同じ画面で追えます。金額を変えるときに直すのは案件の数字だけで、見積書と請求書を別々に打ち直す必要はありません。一覧を見れば、請求がまだの案件と入金待ちの案件がそのまま並びます。エクセルの転記をやめたい段階に来ている方は、KantanBiz で実際の画面を見てみてください。
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