顧客管理と請求書を1つでやる|小規模事業者のソフトの選び方

顧客の名前をエクセルの台帳で探して、住所をコピーして、請求書のテンプレートに貼り付ける。担当者の名前が変わっていたことに後から気づいて、また作り直す。月末になるとこの作業を何件分も繰り返している、という方は少なくありません。件数が10件くらいまでなら「まあ、そういうもの」で済みますが、30件、50件と増えてくると、月末の2日間がまるごと事務に消えていきます。

この記事では、顧客の情報と請求書の作成を1つの仕組みにまとめると何が変わるのか、そしてソフトを選ぶときに具体的に何を確認すればいいのかを整理します。製品を比較する前に、自分の業務のどこが詰まっているのかをはっきりさせておくほうが、選び方の精度は上がります。

顧客台帳と請求書が別々だと、どこで手戻りが起きるか

顧客の情報はエクセルの台帳、請求書は別のテンプレートかクラウドサービス。この分け方自体が悪いわけではありませんが、情報が二重に存在することで、決まったパターンの手戻りが起きます。

1. 転記そのものに時間がかかる

1件あたりの転記が3分だとして、月に30件なら90分。年間では18時間になります。実際には途中で電話が入ったり、どの顧客まで作ったか分からなくなって数え直したりするので、体感はもっと長くなります。

2. 情報の更新が片方にしか反映されない

これが一番やっかいです。顧客が移転した、担当者が異動した、社名が変わった。台帳は直したのに、請求書のテンプレートには古い情報が残っている。あるいはその逆で、請求書を作るときに最新の情報で打ち直したものの、台帳のほうは古いまま。次に見積書を出すときに古い住所を使ってしまいます。

3. 「この顧客に去年いくら請求したか」がすぐに出ない

請求書がファイル単位で保存されていると、顧客ごとの合計を知りたくなったときに、フォルダを開いて1枚ずつ確認することになります。取引の継続を判断したいとき、値上げの相談をしたいとき、この集計に30分かかるのか3秒で出るのかは、意思決定の速さに直結します。

4. 入金の消し込みが請求書と離れてしまう

請求書を発行したあと、入金があったかどうかは通帳やネットバンキングを見て、別の管理表に印をつける。ここも二重管理です。見積から請求、入金までをどうつなげるかという考え方は見積・請求・入金をバラバラにしない|一元管理の考え方で詳しく書いていますので、そちらもあわせてご覧ください。

1つにまとめる場合に見るべき5つの点

顧客管理と請求書を1つのソフトでやろうと決めたとして、次はどれを選ぶかです。機能一覧を眺めても違いが分かりにくいので、実際に使い始めてから困りやすい順に5つ挙げます。無料期間があるものなら、試用中にこの5つを触ってみると判断しやすくなります。

顧客に紐づく取引履歴が追えるか

顧客の名前を開いたときに、その顧客に出した見積・請求・入金がその画面に並んでいるかどうか。ここが「顧客は顧客、請求書は請求書」で別画面になっているソフトも実際にあります。顧客一覧から請求書を検索し直す作りだと、まとめた意味が半分になります。

確認の仕方としては、試用中にテストの顧客を1件作り、請求書を2〜3枚発行してから顧客の画面に戻ってみてください。そこに履歴が出れば合格です。

宛名・敬称・部署を分けて持てるか

見落とされやすいのがここです。請求書の宛名は、実務では次のように構成が分かれます。

  • 会社名(株式会社○○)
  • 部署名(経理部、総務課など)
  • 担当者名
  • 敬称(御中/様)

会社名だけなら「御中」、担当者名まで書くなら「様」というのが一般的な使い分けです。これを1つの自由入力欄にまとめて持つソフトだと、宛名を「株式会社○○ 経理部 御中」という1行の文字列として保存することになります。担当者が変わったときに文字列を打ち直す必要がありますし、封筒の宛名印刷や一括送付をしたくなったときに、会社名だけを取り出すことができません。

また、請求書の送付先と実際の業務の窓口が違う会社もあります。送付先住所を顧客情報とは別に持てるかどうかも、試用中に確認しておく価値があります。

請求書の再発行ができるか

「送った請求書が届いていない」「金額が1件違っていた」という連絡は、どうしても発生します。このときに、

  • 発行済みの請求書をそのまま再出力できるか(同じ番号・同じ日付で出るか)
  • 金額を修正した場合に、元の請求書がどう扱われるか(上書きされるのか、履歴が残るのか)
  • 赤伝(マイナス伝票)や訂正分の請求書を出す運用ができるか

この3つを見ておくと、後で慌てずに済みます。特に2つ目は重要で、発行済みの請求書を黙って上書きしてしまう作りだと、取引先が持っている請求書と自分の控えが食い違うことになります。請求書番号の扱い方については請求書番号の付け方|連番のルールと、やりがちな失敗にまとめています。

なお、発行した請求書の保存期間や、電子データで保存する場合の要件については、国税庁の資料または顧問税理士にご確認ください。

データの持ち出しができるか

使い始める前に確認しておきたいのが、やめるときの話です。顧客一覧と請求データをCSVなどで自分の手元に出せるか。これができないと、別のソフトに移りたくなったときに、画面を見ながら手で入力し直すことになります。

見るべきは次の点です。

  • エクスポート機能が標準で使えるか(上位プラン限定でないか)
  • 顧客だけでなく、請求書の明細行まで出せるか
  • 発行済みのPDFをまとめて取得できるか

明細行が出せず合計金額だけ、というケースは意外とあります。移行を考えるときに困るのはここです。

人数課金か、件数課金か

料金の形は大きく分けて2つあります。どちらが有利かは事業の形で変わります。

課金の形向いている場合注意したい場合
人数(ユーザー)課金請求件数が多く、触る人は1〜2人スタッフや税理士にも画面を見せたいとき、人数分の費用がかかる
件数(請求書の枚数)課金取引先が少なく、単価の大きい仕事毎月の定期請求が多いと、件数が積み上がって上限に当たる

判断の材料として、直近3か月の請求書の枚数を数えてみてください。月に何枚出しているかが分かれば、件数課金の上限に当たるかどうかがすぐ判断できます。また、今は自分1人でも、1年後に事務を手伝ってもらう可能性があるなら、2人目を追加したときの金額も見ておくといいでしょう。閲覧専用のアカウントが無料または安く追加できるかも確認する価値があります。

まとめる前に、いまの業務を1枚に書き出す

ソフトを選ぶ前にやっておくと効果が大きいのが、いまの流れを紙に書き出すことです。難しく考えず、次の順に並べるだけで構いません。

  • 問い合わせや依頼をどこで受けているか(メール、電話、フォーム)
  • 見積を出すか、出さずに始めるか
  • 請求書をいつ出すか(納品時、月末締め、着手金と残金に分けるなど)
  • 入金の確認を誰がいつやっているか
  • その記録がどこに残っているか

書き出してみると、詰まっているのが請求書の作成ではなく、その手前の「どの案件が請求待ちか分からない」ことだった、というケースがよくあります。その場合は請求書だけを速くしても、月末の忙しさはあまり変わりません。案件の進み具合と請求をどう結びつけるかについては案件管理をエクセルでやる|無料テンプレートと、限界が来たときの選択肢が参考になるはずです。

逆に、書き出してみて「請求書を作る作業だけが重い」とはっきりするなら、顧客情報と請求書が同じ場所にあるだけで、月末の作業はかなり軽くなります。

乗り換えるときに気をつけること

最後に、実際に導入するときの順番です。いきなり全部を移そうとすると、途中で止まって元のエクセルに戻ってしまいがちです。

おすすめは、取引の多い上位10社程度だけを先に登録して、1か月分の請求書をそのソフトで出してみることです。全顧客を移すのはそのあとで構いません。10社でうまく回れば、残りを移す判断ができますし、途中で合わないと分かっても、被害は1か月分の二重作業で済みます。

また、切り替えのタイミングは期の途中よりも、月初か期首のほうが混乱が少なくなります。請求書番号の連番が途中で変わっても実務上の問題は起きにくいのですが、通し番号を年度単位で管理している場合は、切り替え時期を合わせておくと後の確認が楽になります。帳簿や証憑の保存方法を変更する場合の取り扱いについては、国税庁の資料または顧問税理士にご確認ください。

KantanBiz は、顧客の情報と見積・請求・入金を同じ場所に置くことを前提に作っています。顧客の画面を開けば、その相手とのやりとりが時系列で並びます。請求書を作るときに住所や担当者名を打ち直す必要はなく、担当者が変わったら顧客情報を1か所直せば、次に出す書類から反映されます。宛名は会社名・部署・担当者・敬称を分けて持つので、封筒の宛名印刷や一括のプレビューもそのまま使えます。発行済みの請求書は履歴が残る形で再出力でき、顧客も請求データもCSVで手元に取り出せます。月末に「どの顧客まで作ったか」を数え直す時間がなくなる、というのが一番大きな変化かもしれません。詳しくはKantanBiz のサイトをご覧ください。

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